#てきとうなお題とキャラ指定くれたらその一場面を140文字でついゆめ書きます
の制限をふっ飛ばしたモノたち。

FGO トーマス・エジソン
FGO クー・フーリン オルタ
ヘルキチ ユーリ・ドラグノフ
ほけがみ 派出須逸人

人物名クリックで飛べます。
夢主はすべて指定なしだったので、適当に書きやすい夢主にしています。

 トーマス・エジソン

お題:恋愛で何か
夢主:スタッフ主(日本人)



夜遅くまでコンソールに向かっている少女を私は知っている。
どうもこのカルデアという場所は七時間ほどの睡眠を摂る者が多い。その中で彼女がコンソールに向かっていない時を、私は見たことがなかった。傍らに珈琲が淹れられていることからおそらく席を立つこともあるのだろう。しかし、その程度だ。

生前、睡眠時間なんぞ四時間もあれば大丈夫だろうと助手に言ったら酷く怒られた記憶が蘇ってくる。

ラボに詰めているレオナルド女史はアーキマンのことを心配しているが、私はそう、彼女のことが心配だった。




「珈琲だ。少し休みたまえ」

ことん、と省電力の為に最低限の電灯のみの部屋で作業を続ける彼女のサイドテーブルにマグカップを置く。すると、ありがとー、と言いながらこちらを見た顔が一瞬のうちに驚愕の物となった。

「えっ、わ、エジソンさん!」

ガタガタとコンソールに膝をぶつけながら、少女はヘッドセットを外しつつ立ち上がる。恐らく持ってきたのは同僚だと思ったのだろう。それにしても慌て過ぎではないか。

「いや、落ちつきたまえ。あぁ、それと厨房からクッキーもくすねてきたが一緒にどうかね」
「あ、えぇと、ありがとう、ございます」

一瞬コンソールの方に向き作業を保存・中断させる姿を見ながら、近くの椅子を引き寄せる。落ち着いたところでぽりぽりとクッキーを食べ始める姿を見るに、食事が要らないというわけでもないのだろうとぼんやり考える。

「珈琲、嬉しいです。美味しい」

ふふ、と笑った少女が私を見上げてくる。いつも見る横顔や後ろ姿はどうも張り詰めていたものだから、あぁそんな風に笑うのかと心が少し華やかになる。

「私が言うのも何だが、少しは休んだらどうか。ずっとここに詰めているだろう?」

サーヴァントとなって、不眠不休の活動が出来るようになった。もちろん常時戦闘を続けてしまえばパフォーマンスが落ちることは確かだが、睡眠を必要としない体というのは実に楽だ。しかし人間であった頃、少量でも睡眠と息抜きというモノは必要だった。そういう記憶はある。

助手からもう少し睡眠を摂れと怒られたことはあるが、まさか私が言う側に回る日が来ようとは。

「お気遣いありがとうございます。でももう少ししたら寝ようと思っていたので、大丈夫ですよ」

マグを両手でつつんだ彼女はすこし隈のある目元でそうあどけなく笑う。日本人と言うのはこれで成人と言うのだから驚きである。

「そうか。では送って行こう」
「えっ」

立ち上がり手を差し出してじっと見ると、観念したのかまた笑い声を零された。コンソールの電源を完全に落として椅子から腰を上げる。

「じゃあ、お言葉に甘えてもいいですか」
「勿論だとも」

グローブを外し、人間の頃よりずっと大きく毛深くなった手に、少女の手が乗りそっと握った。

「エジソンさんって、優しいんですね」

ほがらかな声で、私のことをそう評する君。
さて、どうして君が作業室に詰めていると私が知っているのか。そのことに気がついてくれるのはいつなのだろうな。

 クー・フーリン オルタ

お題:ボードゲーム
夢主:マスター主



次の特異点を調べる束の間の休憩時間。普段は賑やかだというのに何かのタイミングが合わさってふっと静かな談話室で、一人白石と黒石を手元に棋譜を並べていた時のことだ。

「何をしてる」

不機嫌そうな声と共に視界の端にうつる棘の尻尾。顔を上げれば稀代の槍遣い。クー・フーリン──オルタさんがそこにいた。

「何って、囲碁だよ。私の国にある古くから伝わる盤上遊戯。発祥は中国らしいけどね」

何か用だろうか、と持っていた本にしおりを挟んでそう説明をすると、意外なことに彼は対面に座ってきた。

「……これは陣地取りか」
「あ、良くわかったね。うん、これは黒と白の石を交互に置いて、最終的にどれだけ自分の領地を持てたか、って言うゲームなんだ」

一見意味が分からないらしいんだけどね、と言いながら本をまた開いて石を置いていく。Dr.ロマンは眉間に皺を寄せて唸っていたし、マシュもこれは苦手みたいで、数少ない趣味だと言うのに中国系日本系サーヴァントが少ないこのカルデアでは対戦相手がいなく燻っていたところだ。

それでも、この盤面を見て一目で陣地取りだと理解してくれた、それだけで私はどうも嬉しくなってしまったようで、口の端が上がるのも仕方のないことだと思う。

暫く、ぱちりぱちりと私が置く石の音だけが響く。
クー・オルタさんはいつも眉間に皺を寄せて不機嫌そうだけれど、付き合っていくうちに何とか慣れた。うん。というか慣れざるを得ない。

「お前はいつも一人の時、それを並べてるのか」
「ん? うん、まぁ。最近は一人が少ないからそんなにないけどね」

最初の頃は、こんな風に自分の趣味のことを考える何て出来なくて、ドクターやマシュや、他のサーヴァントの方々の部屋を整えるのに精いっぱいになって、そんな暇も余裕もなかった。
ある日自分の荷物を整理したら出てきた簡易碁盤に涙を流したのは、わりと記憶に新しい。

「そうか」

そう短く返されて、はたと気が付く。

「……あ、ごめん。つまんないよね」

折角クー・オルタさん居るんだし何か他のことしようか、と言いかけたところで視界が黒く覆われた。突然のことに驚いて肩が跳ねた、瞬間、「いい、続けろ」と、これまたやっぱり短い言葉。すっと明るくなった視界を見るに、あぁ、顔掴まれたのかとぼんやり思う。すこし乱れた前髪を直してから、また石と本を手にしてちらりと。

「見てて楽しい?」
「さぁな」

胡坐をかいて膝に頬杖をついてすげない言葉とは裏腹に私の指先を眺める彼は、もしかしたら楽しんでいるのかもしれない。

享楽を忘れた、置いてきた狂王。

その彼が、何かひとつでも、私の行動でそれを無意識に心に抱けたのならいいと、思うのだ。

 ユーリ・ドラグノフ

お題:カフェとか花屋
夢主:花屋店主



煉瓦で舗装された通りの端っこ、ぽつんと花屋が建っている。
日々、何かのお祝いごとや、何はなくとも妻のご機嫌取りなどに、花は貰われていく。綺麗に飾った花束や、植木鉢に植わった観葉植物などなど。
それらは必要とされ、必要とされるからこそ美しく輝いて咲き誇る。

そうした小さくも誇りある私の城に、白衣の男が来始めたのは一週間ほど前のことだ。




「これを一本、貰えるかな」

薄い色素の髪を揺らして、驚くほど長身だろうに驚くほど猫背の彼は、店先の花を指してそう言った。そこまでなら、別にいい。まぁびっくりはするけれど、警戒するほどのことでもない。

白い百合を一輪、紙で包むこともせずに持って行った男性。楽しそうにくるくると回していたのは、タケトンボで遊ぶ少年のようで、どこか眩しく感じた。

次の日、またその男性は来た。
やはり白衣で、モノクルを嵌め、ゆらゆらと揺れるネームプレートはどこかの職員がそのまま出てきているのだろうかと言うことを考えされられてしまう。

「うーん、今日はこれにしようかな」

言って指差すのは、向日葵。太陽を冠するこの花を、この男性が持つのかと、正直、それは驚くのも無理はないと思う。店先にあったもののなかでも大輪と言える向日葵を、彼は上機嫌に、やはり素のままで持ち帰る。

青白い顔に、向日葵。なんともミスマッチなその組み合わせに、その男性のことが脳内に刻まれたことは言うまでもないだろう。

そうして、今日で一週間だ。
男性は欠かさずに一日一輪、持ち帰る。きっと今日もそうなのだろうと配達用の花束を作り終えたとき、すっと店先に長い影。あぁ、あの人だ。初日の驚きはどこか遠くに、来ることを待ち遠しく思っている自分がいるのを素直に認めよう。

今日は何を持って行くのだろう、そんなことを考えながら店先へ足を進めたところで、私は一瞬前の自分を殴りたくなった。

「えっ、あっ、血、血が!」

白衣の襟元の部分が赤く染まり、口許からは今でもそれが滴っている。

「きゅ、救急車」

とポケットの携帯電話に手を伸ばしたところで、ひんやりとしたものが手首に触れる。びくりと顔を上げると、おそろしい程に顔色の悪い彼が、にこり、と笑った。いや、にこり、じゃない。笑ってる場合じゃない。なのに どうして。

「大丈夫、日常茶飯事だからね」
「……本当に、大丈夫、なんですか」
「うん」

細長く絡みついた指はそっと離れ、今日もまた楽しげでもなく店先の花を見る。

「……」

いつもは早く決める男性が、今日に限ってじっと花たちを見る。どうかしただろうか、と首を傾げたところで、ぐるりと振り向いた彼はいきなり私の手を取った。

「!?」
「君は吾輩のところに来るべき人材だ」
「────え?」

私の驚愕も、狼狽も、すべて意になど介さず、彼はそう言い切った。
丁度目線の位置にあるネームプレート────ミスタ・ドラグノフは、私にすべてをあげようと、そう言ったのだ。

世界の片隅で細々と花屋をやっていた私の転換は、ここから。


 派出須逸人

お題:生理痛
夢主:同棲中彼女主



生理痛は、重い方じゃ、ないと思う。でも今日のはガツンと来た。来てしまった。

だるい腰を抱えながら(我ながら変な表現ではあるとは思うけれどでも抱えながらと言う表現は合っていると思う)、今日の仕事はこなして帰宅した。

「おかえり」

今日は逸人の方が早かったようで、ぱたぱたと向こうから相変わらず白く顔色の悪い恋人が出迎えてくれる。

「ただいまぁ」

どんとぶつかるように抱きつけば、ぎゅっとしてくれる。こういう甘やかしが、好き。大好き。

「もしかして辛い?」
「うーん、まぁ、わりと」

しかしこの男は、保険医のせいか私の生理周期を把握しているどころか生理への理解が怖ろしく深く、偶に私よりも知識があるんじゃないかと疑う時がある程度の気遣いを見せてくれる。

「じゃあ、手を洗って部屋に行こうか」

こんな時でも手洗いうがいを欠かさせないのは、さすがと言うべきか。ずるずると一緒に洗面所に向かって、帰宅最初の儀式を終わらせる。すると横抱きにして部屋まで連れて行ってくれるのだから、あぁもう好き。便利だから好きなわけじゃないけれど、こういうところが、ほんともう、だめ。好き。

「着替えてて。あったかいもの持ってくるから」

そう言って私を部屋に置いて、リビングの方へ駆けていく。……あ、今のタイミングで頭撫でてもらえばよかった。まぁいいや。

言われた通り大人しく着替えてぼんやり待っていると、半纏やゆたんぽを持った逸人が部屋に入ってくる。

「体あっためないとね」

膝をついて、心配そうに眉根を下げた表情。いつも見てるような、見てないような。スープも作ろうかと立ち上がろうとするものだから、私は彼の袖を引っ張るしかない。本当に気遣いが空回りしがちなのは昔からだと少し笑ってしまう。私が笑った理由が分からないのか、首を傾げる姿も可愛い。

「?」
「いーの、そういうのは後で。ここにあぐらかいて」

我儘にも私がそう言うと、大人しく座ってくれるので、その足の間に私は入り込む。えっ、と慌てたのか多少血色の良くなった顔を無視して、すこし罅割れた手を自分のお腹に。

「逸人が撫でてくれたら、痛くなくなるから」

だからお願い、と薄い胸板に頭を預けると、おずおずと未だに慣れないのかそっとお腹が撫でられ始める。

「本当にこれでいいのかい?」
「うん。ありがとう」

自分のとろけた声に少しはしたなさを感じつつも、気持ち良くてあったかいのだから、仕方ないだろうと自分を甘やかす。

「あー、こんな日々が続けばいいのになぁ」
「……それ、僕がプロポーズの言葉として用意してたんだけど」

えっ、と顔を上げようと思って、もう片方の手のせいで出来なくて、代わりにどくどくという心臓の振動が皮膚伝いに伝わってくる。

「えーと、あの、あの」
「……うん」
「よろしく、おねがいします」

何ともアレな話だけれど、これが私たちのプロポーズの形であるらしい。あー、もう、だいすき。