2018年小話。
#てきとうなお題とキャラ指定くれたらその一場面を140文字でついゆめ書きます
シークさん/OoT版
天光/Fate
人物名クリックで飛べます。
140文字です。
ゆめではない気がするけれど気にしないでほしい。
▼ 天光
夢主:???
お題:天光で「髪を梳く」
男の手が、女性の髪に触れる。
それはある程度以上の関係でなければ決して許されることのない行為だ。
髪というのが大して大事ではないという女性もいるではあろうかしかし、見も知らない異性に頭部を触れられるというのに嫌悪感を持たない人間はあまりいないだろう。知る人間でさえも頭に触れるというのはとてつもなくタブーに近い。
しかしその男は許される。褐色の肌に真っ白な髪を持つ青年は、女性の柔らかな場所に、それが当たり前のように櫛を持っている。
対する女性は、薄い黄色に花を散らし腰のすこし大きなリボンがキュートなワンピースを着て鏡の前に座っている。今日は友人と出かけるのだそうだ。予め告げていた予定。共に起きた朝、再度触れたその話題に頷いた男──そう、彼女の恋人は「髪を結いましょう」と柔らかな声で提案をした。
それに至り、男は髪の毛に触れ、ゆっくりと、毛先から丁寧に、相手の髪を梳いていく。時より髪を持つ指先がうなじに触れ、くすぐったそうに溢れた声は幸福に彩られていた。
この環境と関係はとても迂遠であり、そして刹那的でもある。
シーソーのように行ったり来たりするわけでもなく、危ういバランスの上で存在している。その中で、時に絶望しても、時に悲嘆にくれようとも、二人でいる世界を大切にしていた。
きっと二人とも分かっている。世界はいつか崩壊し、お互いの手を離さなければならない日が来ること。それは逃れられない運命だということも。きっとその時が来たら後悔をする。たくさんたくさん、いろんなことをしたかったと 嘆くだろう。
でもそれは、神様であったり、英霊であったり、とっくのとうに人間ではなくなった存在だとしても、明らかな人間の証だと『僕』は思う。あぁ、『僕』がどういったものかというのはここでは語らないでおこう。きっといつか、またお目にかかるだろうから。
そんなことを考えていたら、どうやら髪の毛を結び整え終わったらしい。
「可愛らしいですよ」そう囁いて、相手の両肩を軽く叩き、玄関まで送り届ける青年。
扉を開けば、そこには夏の空が広がっている。
サンダルを履いて二、三歩飛び出た彼女は振り向いて、夏らしい装いで、美しくきらめいて笑う。
彼女の名前が────彼の救いとなる概念のように。
とあるロザリオの話